阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
松原市医師会は、松原市から 熱性けいれんの生徒に対する学校での急な発熱時の予防対策についての相談を受けました。年長児では熱性けいれんそのものが比較的稀であり、学校で熱発時の対応が必要な例は極めて少ないと考えますが、学校として予防にも関与するとの積極的な申し出であり、医師会としても、これに対応して具体策を作成する必要があると判断しました。
熱性けいれんについては、小児神経学会から「熱性けいれん診療ガイドライン2015(以下GL2015)」が出されており、これに準拠するのが、現時点では最も有効・安全な対応であると考えます。GL2015に準拠して以下のような対応が望まれます。
(1) 年長児の熱性けいれん
GL2015は年長児の有熱発作に対して「熱性けいれんは通常生後60ヶ月までの乳幼児期の発作と定義するが、満5歳を越える年長児の有熱発作についても、年令以外の定義を満たす場合には熱性けいれんと同様に対応してよい。」としています。
「熱性けいれん」は次のように定義されています。「主に生後6~60ヶ月までの乳幼児に起こる。通常は38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外される。
さらに、GL2015では、年長児の熱性けいれんの項で、定義から、6~60ヶ月の年令条項を除いて、年長児でも「通常は38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外される。」との、この定義にみあう熱のけいれんを60ヶ月までの乳幼児の「熱性けいれん」と同様に扱ってよいとしました。
年長児でも、明らかな発作の原因となる基礎疾患がみられなければ、年令とともに消失する「熱性けいれん」と判断し、予防対策も同様よいことになります。
ただし、60ヶ月以後に発作を反復でしたり、無熱性発作を発症した場合は、てんかんの可能性を考慮する必要があります。6歳までに頻回に熱性けいれんを起こし、6歳以降にも有熱時発作が続くか、無熱性全般発作を起こす症候群「熱性けいれんプラス(genetic epilepsy with febrile seizures plus:GEFS+)」には注意が必要で、このような場合には専門家への相談が必要となります。
(2) 発熱時の熱性けいれんの予防、その適応基準
「熱性けいれんの既往のある小児において発熱時のジアゼパム(ダイアップ坐薬)投与は必要か、適応基準は何か」について、ガイドラインは以下を推奨しています。
推奨
  • 熱性けいれんの再発予防の有効性は高い。
    しかし副反応も存在し、ルーチンに使用する必要はない(グレードC)
  • 以下の適応基準①または②を満たす場合に使用する(グレードB)
適応基準
①遷延性発作(持続時間15分以上)
②次のⅰ~ⅵのうち二つ以上を満たした熱性けいれんが二回以上反復した場合
ⅰ.焦点性発作(部分発作)または24時間以内に反復する
ⅱ.熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常,発達遅滞
ⅲ.熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
ⅳ.12か月未満
ⅴ.発熱後1時間未満での発作
ⅵ.38℃未満での発作
GL2015では、以上のように、発熱時の熱性けいれんの予防の適応基準はこれまでの予防基準に比べて、このかなり厳格な縛りが行われています。薬剤の乱用をつつしむ観点から、この推奨に準拠するのが有効かつ安全な対応だと考えます。 「しかしながら、医療機関の体制は地域で異なり、また家族の不安・心配の程度も各々、これらを鑑みた対応を考慮する必要がある」とも述べられており、推奨の厳格な適応を緩和して、現場の判断を尊重することも配慮されています。
(3) 投与量、投与対象期間および使用上の注意
GL2015では、以下の推奨が行われています。
推奨
  • 37,5℃を目安として、1回0.4~0.5mg/kg(最大10mg)を挿肛し、発熱が持続8時間後に同量を追加する。(グレードB)
  • 鎮静・ふらつき等の副反応の出現に留意し、これらの既往がある場合には少量投与していればにするなどの配慮を行いつつ注意深い観察が必要である。使用による鎮静のため、脳炎・脳症の鑑別が困難になる場合があることも留意する。(グレードB)
  • 最終発作から1~2年、もしくは4~5歳までの投与がよいとされるが明確なエビデンスはない。(グレードC)
4~5歳を越えた年長児でも、(2)の熱性けいれんの予防の適応基準を満たす場合には、乳幼児と同様に上記の推奨1.および2.に従ってダイアップ坐薬の予防投与を行うことが推奨されます。
しかし、実際には年長児での熱性けいれんは稀であり、ダイアップ坐薬の予防的な使用が必要な年長児は極めて稀と考えられます。
(4) 熱性けいれんの子どもに注意すべき薬剤
GL2015けいれんの既往のある小児に対する抗ヒスタミン薬とキサンチン製剤の使用は推奨されないと明記されました。
推奨
  • 熱性けいれんの既往のある小児に対して発熱性疾患罹患中における鎮静性抗ヒスタミン薬の使用は熱性けいれんの持続時間を長くする可能性があり推奨されない。(グレードC)
  • 熱性けいれんの気大生のある小児に対してはテオフィリン等のキサンチン製剤使用は熱性けいれんの持続時間を長くする可能性があり推奨されない。特にけいれんの既往を有する場合、3歳以下では推奨されない。また鎮静性抗ヒスタミン薬との併用は上チアを悪化させる可能性があり推奨されない。(グレードC)
抗ヒスタミン薬のけいれん誘発性は、脳内ヒスタミンH1受容体占有率と相関があり、各種抗ヒスタミン薬の危険性の程度を示す表が掲載されており、参考になります。
図1 各種抗ヒスタミン薬におけるヒト脳内ヒスタミンH1受容体占有率
(5) 当院での2年間の熱性けいれん入院110人
  うち、年長児(5歳以上)は9人
2015年4月1日から2017年3月31日までの2年間で、当院小児科入院の子どもの熱性けいれんは110人、このうち5歳以上は9人(5歳4人、6歳3人、7歳1人、8歳1人、9歳以上0人)、6歳以上では5人でした。この年長児の熱性けいれん9例の原因はインフルエンザが2人、他の7人は腸炎、気管支炎、上気道炎で、病原体の特定はできませんでした。5歳以上での反復例はありませんでした。
小児の熱性けいれんの原因は、インフルエンザ17人、突発性発疹症10人、ロタウイルス胃腸炎8人、アデノウイルス感染症5人、RSウイルス感染症3人、溶連菌感染症3人、ヒトメタニューモウイルス感染症2人、手足口病2人、その他でした。原因別ではインフルエンザ、突発性発疹症、ロタウイルス感染症の順でした。年長児ではインフルエンザが、乳幼児では突発性発疹症が最大の原因でした。
薬剤の使用による鎮静で、脳炎・脳症の発症の確認が遅れることがないよう、ダイアップ坐薬の予防的使用には適応基準を尊重することが重要と考えられます。
図2 年齢別熱性けいれん分布(2年間 110例)
図2 年齢別熱性けいれん分布
図3 特定された原因病原体(53例)
図3 特定された原因病原体
参考:
熱性けいれん診療ガイドライン2015 日本小児神経学会
日本医事新報 No.4813 2016/7/23 特集:熱性けいれん診療の現在
阪南中病院ホームページ 小児科トピックス「新しい熱性けいれんガイドライン2015」
(あんしんねっとわーく第112号 2015年5月1日)