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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 中田成慶
症例 9ヶ月 男児
経 過
置物にスパンコールが貼りつけられていた 軍手で作った蛙の置物の飾りつけに、星型スパンコールがボンドで貼りつけられていた。やっとうまく使えるようになった指先でスパンコールをはがして、誤飲。
母親は現場を見ていなかったが、子どもが急に嘔吐し、吐物の一部に潜血が混ざっており、遊んでいる蛙の置きものの一辺10mmまたは15mmの星型スパンコールが2枚はがれており、吐物内にもスパンコールがないことから、誤飲したに違いないと判断し、耳鼻科に急行。
耳鼻科で喉頭ファイバー検査をしていただく
耳鼻科で喉頭ファイバー検査。耳鼻科Dr.は喉頭に内出血を認めるが、咽喉頭に異物なし、異物は排出されていないもよう、誤飲の精査が必要として、当科へ紹介いただく。
症状は認めない・単純撮影では異物は写らない
呼吸困難なし、嗄声なし、喘鳴なし。咽頭・喉頭の違和感のそぶりや疼痛による不機嫌さなし。一般的な診察では異常所見なし。一見元気で、何の症状もない。
しかし、誤飲している場合、星型スパンコールの5つの角は鋭利で、消化管のどこかで突き刺さり穿孔させる可能性があり、利用しうる侵襲性の少ない検査で、異物を検査しなければならないと判断。
単純レントゲン検査ではスパンコールはまったく写らない(単純撮影)
単純撮影では異物は見当たらない。
ファントムを使いテスト撮影を行ったところスパンコールは薄すぎて検出できないことが判明。単純撮影では、生体中のスパンコールを検出すること不可能と判断。
単純レントゲン検査ではスパンコールはまったく写らない
CT検査 星型異物は撮像できず
放射線科のDr.から、CTスキャンなら検出できるとのアドバイスをいただき、CT検査を実施 axial,coronal,sagittalの3方向の画像には星型異物は見当たらず、母親に「異物は検出できない。誤飲していないことを期待し、経過をみることになります。」と説明し、帰宅していただく。その20分後、放射線科から「星が見えました」コールをもらい、急ぎ帰宅途中の患者・母親に戻ってきていただく。
星が見えました
担当の放射線技師は、星型異物は見えないが、axialとsagittal viewで、喉頭直下の気管の後方、脊柱との間に約10mmのhigh densityの線状陰影があることに注目し、気管・脊柱の傾きに沿う角度でcoronal view 画面を再構成。すばらしい直感!
星が見えました
大阪母子医療センターで異物除去
食道異物として、大阪母子医療センター・小児外科に全麻化での内視鏡的摘出を前提に、受け入れを要請。救急車で搬送。
全麻下で喉頭展開。食道に半分入るようにして異物を認め、マギール鉗子で無事摘出。上部消化管内視鏡検査で食道から胃まで観察。粘膜病変等のないことを確認。摘出異物は10mm大の青色星型スパンコールであった。翌日、退院したとの御報告をいただく。
乳幼児の誤飲事故
2017年6月の日本小児救急医学会の一般演題にも、異物誤飲の報告があります。早急な摘出が必要な異物の報告のほか、検索が困難であった異物症例が報告されています。
  • 1歳児に魚骨を含む食事中に誤嚥し、以後喘鳴が続いたが、喘息と診断され、発症から9年後に気管支異物・ポリープ形成で魚骨が摘出された症例
  • 8ヶ月の乳児に突然、喘鳴と咳嗽が出現、気道異物の疑いで、受診したが、β2の吸入で喘鳴は消失。しかし、CT検査で左主気管支に異物があり、ガム包装紙のくずが摘出された例
  • 2歳の児が冷蔵庫の磁石を誤飲し、噴門部で一塊となって停滞、複数の磁石による粘膜の挟み込みがあり、内視鏡で摘出時に粘膜損傷を伴った症例
  • ブタコイン(コイン型リチウム電池)の食道異物で2時間で損傷は筋層にまで及んでおり、リチウム電池の高い危険性が強く指摘された症例
  • 11ヶ月の乳児で、プラスチックボトルを口にくわえていて、急に喘鳴が出現、両声帯間に異物(ボトルを包装しているプラスチックの一部で約1cm大の破片)を認め摘出した症例など。
ボタン電池、複数の磁石、コイン、プラスチック包装のかけら、おもちゃなどの部品やかけらなど39mm~42mmとされる口に入る大きさ以下のものであれば何でも誤飲の危険があります。国民生活センターからは、高吸収性樹脂ボール(インテリア・ディスプレイなどに使用されている)の誤飲で、直径15mmのボールが40mmに膨張し、十二指腸閉鎖で開腹手術されたことが報告され、注意喚起が行われています。誤飲の危険を減らすことが最も先決ですが、医療側が誤飲に対して真剣で適切な対処を心がけることの重要性を改めて実感した星型スパンコール誤飲でした。患者も小児科医師も放射線技師の直感に助けられた症例でした。
参考:
日本小児救急医学会雑誌 2017年No2
患者の受け入れ・治療を行っていただいた母子医療センター小児外科に感謝します。