阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
今年もノロウイルスが流行しています。治療法が対症療法に限られているため、この先、このウイルスの流行は毎年くりかえされることになるでしょう。私たちは知識で対応するしかありません。
イムノクロマト法によるノロウイルス検査キット
イムノクロマト法による簡便な診断法が利用できるようになりました(2007年11月)。これまでは便ロタウイルス、便アデノウイルスの検査が陰性で、細菌性腸炎とは考えられない嘔吐下痢をノロウイルスと臨床診断するか、又はRT-PCR法(保険外で8500円)で診断するしかなかったのですが、簡便なイムノクロマト法で確定診断ができるようになりました。(しかし、まだ保険適応されていません。1検体に約1700円かかります。)
2008年も11月以降、乳児の嘔吐・下痢で、年齢的にはロタと思われる多数の子どもたちから、ノロウイルスが検出され、対応に役立っています。
伝染経路:接触感染だけでなく、塵埃感染の防止の重要性
ウイルスの感染力は強く、100個以下のウイルス量で感染が成立します。CDCによる「隔離予防策のためのガイドライン」では、接触感染、飛沫感染、空気感染の経路別対策が提唱されていますが、ノロウイルスは複数の感染経路で感染が伝播します。
a.接触感染 : 
便と吐物から大量のウイルスが排出されるため、便及び吐物からの接触感染が起こります。トイレのノブや、患者に使用した聴診器などからの間接的な伝染が否定できないため、ノロウイルス患者が入院中は、患者及び患者家族に対して行っている、カルテ配布によるカルテ開示を一時中止しています。

b.飛沫感染 : 
吐物が飛び散ったことで、その飛沫を間近で吸引して、感染が成立します。飛沫感染、接触感染を絶つために、吐物に対しては、グローブ・マスク・ゴーグル・ガウン着用で拭き取る方法が取られます。吐物をふき取った後は、塩素系消毒剤でその場所を消毒します。

c.塵埃感染
(dust particle):
ノロウイルスは、吐物や下痢便の処理が適切に行われなかったとき、残存したウイルスが塵埃として空気中に舞い上がり、間近ではない、離れた場所で感染が成立することが分かっています。吐物や下痢便による、間接的な空気感染といえる伝染経路です。このため、集団発症を予防するために、便や吐物が付着した場所、物を塩素系消毒剤を用いて、消毒することが重要です。

消毒
ノロウイルスは塩素系消毒剤でなければ、効果がありません。アルコール消毒は効果が低く、塩化ベンザルコニウム(オスバン)も無効です。
塩素系漂白剤の使用法
吐物や便が直接付着した物や場所(汚れた衣類、リネン)は、0.1%(~0.5%)
トイレ周辺は汚染区域とし、0.1%以上で、1日複数回消毒
患者及び家族が使用したベッド柵、椅子、机、ナースコール
患者が使用したトイレの取っ手、ドアノブ、便座などは0.02~0.06%
免疫と隔離期間
免疫が成立するのは、数ヶ月(長くて2年程度)であり、このため、全ての年齢層を巻き込んだ流行が繰り返されています。医療機関や集団的施設での流行も後を絶ちません。
症状回復後も、ウイルスは1週間以上(~2週間、~1ヶ月)、便から排泄されます。しかし、元気になった患者を長期に隔離することは現実的でないため、嘔吐がなく、医療機関内では、軟便程度に回復し3日経過したら、隔離をゆるめても良いとする考えが一般的になっています。
保育所などでは、嘔吐がなく、オムツから便が漏れる心配がない程度に、便性が回復したら、出席可能と考えられます。
ノロウイルス腸炎とけいれん、脳症
ノロウイルス感染に伴う脳症の報告が散見されます。高熱を伴っていることが多く、hemorrhagic shock with encephalopathyに分類されるもののようです。我々も、高熱・コレラと思われるほどの激しい下痢で強い脱水をきたし、けいれん重積、その後、意識低下をおこした1才児の症例を経験しています。
また、「軽症下痢に伴うけいれん」があります。熱を伴わないことも多く、下痢にしばしば群発性のけいれんを発症します。けいれんはジアゼパムに抵抗性で、嘔吐がない場合はカルバマゼパム(テグレトール)5(~3)mg/kgの1回投与が有効とされています。嘔吐で服用できない場合は、リドカイン2mg/kgをゆっくり静注し、その後2mg/kg/時間で持続投与しながら、減量する方法がとられます。
サポウイルス(sapovirus)による集団胃腸炎の報告
2008年11月大阪市内の保育所で、サポウイルス(ノロウイルスと同じCalicivirusに属する近縁ウイルス)による集団感染例の報告があります。施設内で、人から人への感染で拡大したとされています。職員を含め31人が発症、下痢16名(52%、1日1~3回)、嘔吐21名(68%、1~4回)、発熱2名(6.5%37.3℃)で、保健福祉センター(保健所)から、ノロウイルス対策と同様の指導が行われました。サポウイルスの同定は集団胃腸炎の発生のときには、公的保健機関が検査を行います。検査センター(例えばSRLなど)では検査は行われていません。
参考 :
国立感染症研究所 感染症情報センターIDSC 2007/2/16
     〃       病原体情報IASR【速報】2008/12/17
小児科診療 2007年12月号 ノロウイルスの集団感染対策2295