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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
インフルエンザ菌b型(Hib)感染症
生後4か月以後の乳幼児の細菌性髄膜炎の約60%がインフルエンザ菌b型(Hib)が原因です。小児科医が、「not doing well=なんとなく元気がない」ベビーや、focusがはっきりしない細菌感染症、けいれんを伴う病態のとき、髄液検査を行うのは、細菌性髄膜炎が今、存在するとの現実味をもった危険性を考慮しているからです。
日本における症例数調査では、罹患率は7.5~8.9(5歳未満児の子ども人口10万人当たり)、出生数120万人で年間600人、予後不良例が20%と推計されています。千葉県の調査では、発症罹患率は、2005年髄膜炎11.7 全身感染罹患率16.5で、増加傾向にあることが示されています。
全身性(侵襲性)感染の殆どが、髄膜炎と喉頭蓋炎で、その他には肺炎、関節炎などを発症します。
インフルエンザ菌は薬剤耐性が進み、BLNAR(β-lactamase nonproducing ampicillin resistant)株やBLPACR(β-lactamase producing amoxicillin-clavulanate resistant)株などが出現し、抗生剤治療も、最初からメロペンを選択することが必要になりつつあります。
結合型Hibワクチン
Hibはグラム陰性・小桿菌で、莢膜(きょうまく)の有無で、莢膜株と無莢膜株に分けられ、莢膜型は多糖体の違いから、a~fの6タイプに分けられ、臨床的にはb型が髄膜炎の原因であり重要です。(呼吸器感染としては、無莢膜株も重要です)
感染防御には、莢膜多糖体(Polyribosyl ribitol phosphate;PRP)が関与します。母体由来のPRPに対する抗体は、生後4か月~6ヶ月までに漸減します。その後、自然感染や、交叉抗原への暴露などを通して、年令とともに上昇し、6歳では抗体保有者が増え、18歳以上ではほとんどの人が十分な抗体を持つようになることが分かっています。
 ワクチン製造の上で、PRPのみのワクチンでは、免疫原性が弱いため、PRPに破傷風トキソイドを結合(PRP-T)させた結合型ワクチンが開発され、乳児にも十分な免疫ができるよう工夫されました。現在では、アジア・アフリカを含む120カ国で使用されています。
Hibワクチンとその有効性
Hibワクチン導入後、Hib全身感染症が激減したことが、多くの統計で示されています。(1990年アメリカでは2ヶ月の子どもへのHibワクチン接種を開始し、Hibによる重症感染症が激減しました。)1998年WHOは「安全性と有効性の示された結合型Hibワクチンは世界中すべての乳幼児の予防接種計画に含まれるべきである」とのPosition Paperを発表しています。
Incidence of Invasive Hibi Disease,1990-2004
※ アメリカ合衆国におけるHib髄膜炎の頻度の低下(CDC)

やっと日本で認可、しかし任意で、高額定期接種への拡大を
2008年12月厚生労働省は、結合型Hibワクチンをやっと認可しました。しかし、有料で1回7000円~8000円、4回接種すると3万円前後の費用がかかります。
Hibワクチンの導入を進めてきた各種の団体は、これが、定期接種に組み込まれるべきだと考え、運動が進められています。今のままだと、知識とお金のある家庭の子どもが救われる新たな格差拡大を進めてしまうことになります。
国が定期接種に組み込む決定を行うまでの間、補助を行う地方自治体が増えてきています。すでに、鹿児島市、宮崎市、宮崎県清武町などでは、補助が実施されており、平成21年4月から栃木県大田原市、東京都のいくつかの区(品川、中央、荒川、渋谷)などで補助が行われることになっています。(補助の額は、1回当たり3000円~5000円と自治体で違いがあります。)
自治体レベルでの補助の制度作りとあわせて、定期接種への組み込みが行われる必要があります。ワクチン行政の立ち遅れを、Hibワクチン定期接種化で、取り返す必要があります。
接種スケジュール
生後2か月~7か月未満…4~8週間間隔で3回。1年後4回目
生後7か月~12か月未満…4~8週間間隔で2回。1年後3回目
生後1歳~5歳未満…1回接種
5歳以上Hib感染症はほとんど発症がないので、接種は不要。
副作用は少ないとされていますが、注意は必要です
数日以内に消失する、接種部位の発赤や腫脹が殆どで、発熱は数%とされています。(3種混合ワクチンと同等またはそれ以下と言われています。)日本では接種が開始されたばかりであり、今後、副作用の危険性を注意深く判断していく必要があります。
インフルエンザ菌の名称の歴史
インフルエンザ菌は1892年Pfeifferによって、インフルエンザのパンデミック時に死亡した患者の肺から発見され、インフルエンザの原因病原体として、誤ってインフルエンザ菌の名称が使用されました。
インフルエンザがウイルスによるものと確認されたのは、1930年代です。
参考 :
小児科学会雑誌112巻9号 113巻1号
細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会