阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
急性心筋炎
急性心筋炎は心症状(胸痛、失神、呼吸困難、動悸、ショックなど)に先行してかぜ症状や消化器症状などの非特異的な症状で発現することが多く、どんなウイルス感染でも起こる可能性があるとされています。
診断には、ひょっとしたら心筋炎ではないかと疑うこと(心筋炎マインドを持って診療に当たること)が最も重要です。疑わないと診断ができないからです。
CPK・心筋トロポニンを測定すること、心電図を検査することが欠かせません。心電図は経過中に何らかの異常所見を示します。low R wave/abnormal Q型; heart block型; wide QRS/VT型; inverted T型などを示します。
【症例1】心窩部痛と下痢の10歳(男)
2月5日:
食欲低下 吐き気 軟便  その後、39℃、下痢、心窩部痛が続く

2月8日:
解熱 軟便4回  心窩部痛続く
夜間救急外来受診 インフルエンザ迅速検査(陰性)
CRP 4.8mg/dl 白血球数9100(Neutr61.9% Lym11.8%)
AST 161  ALT 24 LDH 287 CPK 1360iU/L CPKMB 199
Amy 17iu/L(60-200) Lipase 17iu/L(23-300)
心筋トロポニン+
心電図:V4-6でST上昇、T逆転
急性心筋炎の診断で入院。
心臓超音波検査:EF正常範囲。重症化予防のためγグロブリン1g/kg使用

2月11日:
CPK 54 CPKMB 12 AST 35 心筋トロポニン(—) CRP0.2
心不全なしに軽快、24病日に心電図のT波は陽性化(正常化)
その後、野球部の活動を含め、普通生活に復帰。
ウイルス検索ではエンテロ(コクサッキーB群)、アデノ、インフルエンザなど原因ウイルスは特定できず。

ウイルス性筋炎
インフルエンザ、コクサッキー、パラインフルエンザ、エコー9、アデノ21、単純ヘルペスタイプ2、EBなどのウイルス感染で引き起こされることがあります。インフルエンザ筋炎は①小児良性急性筋炎型②急性筋炎型③横紋筋融解型に分類されています。①小児良性急性筋炎型はB型で多く発症し、腓腹筋の痛みが朝の目覚めや、昼寝の後に気づき、時に大腿部に及び歩行が不可能になりますが、1週間程度で改善します。②急性筋炎型は四肢の筋群の筋痛や脱力で始まり、回復するのに2〜4週かかるものを言います。③横紋筋融解型はミオグロビン尿による急性腎不全、意識障害、DICを発症したりする重症型です。
大人では心筋梗塞、熱中症、抗コレステロール薬による横紋筋融解症、crush syndromeなどで、CPKの上昇があり、CPKの項目がルーチンに検査されます。しかし、小児では筋肉トレーニング後の一過性の高CPK血症以外には、CPKの上昇を起こす疾患は稀で、日常的な検査が行われていないことも多いと思われます。ぐったり、脱力感、筋痛の症状にはCPK測定が重要だと再認識しています。
今年、経験した2症例を示します。
【症例2】5歳10か月(女):ぐったり状態と脱力で発症、CPKが上昇
3月2日:
38.6℃の熱、嘔吐、腹痛、ぐったりと脱力感あり入院し、輸液治療。歩きたくないとの訴えで、移動には抱っこか車椅子が必要となる。

3月3日:
熱が続き、元気が出ない。インフルエンザ(-)アデノウイルス(-)

3月4日:
熱が持続、CRP1.4  AST60 ALT29 CPK1382 尿ミオグロビン(-)

3月5日:
解熱、CPKは2706に上昇、少しずつ元気になり、動けるようになった。

3月9日:
CPK135、脱力なし、筋痛なし。

【症例3】7歳(男) ふくらはぎの筋痛→大腿部の筋痛→歩行不能
3月25日:
37.8℃

3月26日:
朝からふくらはぎの痛みがあり、爪先立ちで、やっと歩行。夕方に向けて、太ももの筋肉痛に進展し、立てなくなる。

3月27日:
下肢の筋肉痛、立てない、歩けないことで受診、入院。
CPK1488 AST62 ALT24 LDH256  CRP<0.2

 
3月28日:
症状は軽減、CPKは更に8449に上昇 尿は鮮血反応(-)淡黄色でミオグロビンの褐色~ワインレッドではない。(ミオグロビン検査中)

3月30日:
歩行可能となる。CPK1383

3月31日:
現在入院中。

症例3は現在進行形の状態で結合織病や先天性筋疾患の突然の発症なども考えながら経過観察中です。
参考 :
小児救急治療ガイドライン  市川光太郎編集 診断と治療社
小児科学 総編集 大関武彦 近藤直美  医学書院(2008.4)