阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
新型インフルエンザは、依然として流行しています。ほとんどの人が、軽症に経過し、治癒していますが、季節型インフルエンザと違って、全国的にも、また当院でも肺炎が多発し、脳症、心筋炎などを含めて、新型インフルエンザの特徴が明らかになってきています。
新型インフルエンザは肺炎の確率が高い
8月14日入院の7歳の子どもが最初の炎症例でしたが、その後、9月19日13歳、10月21日4歳、10月30日3歳、11月1日5歳など、酸素を必要とする肺炎症例が続きました。
肺炎図
11月1日の5歳の症例は、右上葉の無気肺、気縦隔症、皮下気腫を伴う強い呼吸困難があり、新型インフルエンザの特徴の一つとされているPlastic Bronchitis(鋳型気管支炎)の合併がありました。11月7日、これらの症例を松原市医師会学術集会で報告しました。
全国的にも、重症の肺炎症例が多数報告され、9月30日日本小児科学会から、「小児インフルエンザ重症肺炎・ARDSの治療戦略」が出されています。呼吸数の増加、酸素飽和度94%以下の症例で、肺炎を疑い、検査・治療戦略を立てるよう、注意喚起されています。
日常診療では、咳が多いインフルエンザには肺炎を疑い、早めにレントゲン検査を行うことが必要です。
新型インフルエンザ脳症―意識障害・異常行動に注意
新型インフルエンザでは、けいれん重積のない、意識障害で始まる脳症が多く報告されてきています。
2009年9月「インフルエンザ脳症ガイドライン」が改訂・発表されています。JCS20以上なら脳症と診断、10以下のときは、12時間から24時間の経過で、意識障害が持続または悪化する場合に脳症と診断する診断基準・及び治療が提案されています。
7歳症例
10月25日高熱、26日午前3時目覚めて、視線が合わない、母親の視線を避ける、母親の背中を意味なく触ったり、自分の足を触ったりする異常動作がある、呼びかけには反応しうなずくが、言葉で答えない、自分の誕生日が言えない、などの状態が約15時間続いた。頭部CT検査:異常所見なし。脳症疑いで、大阪市立総合医療センターに転院していただきましたが、意識障害は、その後すぐに消失し、26日には退院。熱せん妄が長く続いたと考えられる症例でした。
10歳症例
11月6日夕方から熱、11月7日熱が続き、インフルエンザA(+) リレンザの処方を受ける。
11月8日午後解熱、18時ごろ「怖い夢を見た」「俺、寝てた?」、興奮気味で椅子に登り立ち上がる、手鼻をかむなどの異常行動が見られた。20時ご紹介にて当院受診、病院前では「阪南や」と言いながら、待合では「ここどこ?」、焦点が合わない。生年月日は言える。頭部CT検査:異常所見なし。
8日インフルエンザ脳症疑いで、メチルプレドニゾロンパルス療法実施。
9日応答は正確で見当識は正常化、しかし、うとうと良く眠る(JCS10)。
13日覚せい状態が長続きするようになり、軽快退院。
1歳6ヶ月症例
11月25日熱、26日インフルエンザA(+)、タミフルの処方を受ける。
夕方から、不機嫌、一晩中泣いてばかり。
27日解熱、しかし、不機嫌が続き、抱かれていても泣いてばかり、昼寝もしない、指差しするので、差したものを渡そうとしても全て拒否する、視線は瞬間的には合うが、すぐに離れる、母親はわかっていて、人の区別はついている。頭部CT検査:異常所見なし。脳症の疑いもあり入院。
28日不機嫌さは続く、決して笑顔を見せないなどの異常は続くが、意識障害の進行はない。タミフル服用で経過観察。
29日母親が相手をすると、時に笑顔が見られるようになり、退院。インフルエンザ罹患による体調不良・不機嫌として、脳症は否定。
分娩前日の母親のインフルエンザ発症と新生児への対応
および乳児への対応
11月24日夕方、母親が熱発、11月25日朝、インフルエンザA(+)。当日、MD-twin分娩。35週6日、第1子2230g、第2子2176g。双胎のベビーで、二人とも低体重、新生児一過性多呼吸症候群で、NICUに入室、期せずして母親から隔離(逆隔離)することになりました。
日本小児科学会「新型インフルエンザに対する出生後早期の新生児への対応案(平成21年10月1日)(資料)」によると、母体発症後7日間は母親とベビーを隔離、母乳にはウイルスはいないので搾乳し、第3者による哺乳瓶授乳はOK、母乳の直接授乳は母体の発症7日以降とされています。これにしたがって、現在母親はベビーと対面できないまま、いったん退院していただく予定です。11月30日現在、ベビーは二人とも保育器内で、元気です。
また、この「案」によると、「新生児は、重症化すると致命的になる可能性があるため、オセルタミビルの投与を推奨する。一般に、オセルタミビルの副作用は主に嘔吐と下痢であるが、新生児のデータはない。治療投与量:4mg/kg 分2×5日間」とされています。このベビーたちが、万一、インフルエンザを発症したときには、タミフルを投与することにしています。
現時点では、新生児期を過ぎた乳児についても、インフルエンザ発症時には、副作用の発現に注意しながら、タミフルを投与することを考慮せざるを得ない場合が多くなるのではないかと考えています。
新型インフルエンザの新しい情報に関心を!
日本小児科学会のホームページには、新型インフルエンザ対策室による最新の情報が掲載されています。11月19日の第7報によると、新型インフルエンザの急死例(12例)の4つの病態が推測されています。
  • 脳症が進展し高度の脳浮腫が急激に進む型
  • SIRSからhypovolemic shockが生じ、心不全をきたす型
  • 重症肺炎が急激に進行し、呼吸不全となる型
  • 心筋炎または心機能障害が主な病態である型
死亡例を含む重症例を参考に、新型インフルエンザの臨床像をイメージしながら、診療に当たる必要があります。
症例 重症肺炎、DIC,CPK上昇、多臓器障害をきたした13歳児
11月25日熱、26日熱、咳、インフルエンザA(+)。タミフルの処方を受ける。27日解熱せず、呼吸困難が出現。11月28日熱、咳、多呼吸(40回/分)、呼吸困難(room airで酸素飽和度88~92%)、ご紹介にて初診。酸素マスク2l/分で酸素飽和度99%。
胸部レントゲン:右側に広範な肺炎
CRP16.2mg/dl、白血球8700(好中球78%)、血小板9.3万
BUN30mg/dl Creat0.60mg/dl  AST218 ALT61 LDH469  CPK5044  PT58.8%(PT-INR1.38) APTT55.6秒 Fib296mg/dl ATⅢ53.7% FDP3.5μg/ml
「重症肺炎、多臓器障害、DIC疑い」で、府立呼吸器アレルギーセンターに受け入れいただき、転院。このような重症例があることを考慮しながら診療に当たる必要があることを痛感しています。
参考 :
多呼吸の診断(年齢別)
出生から3ヶ月・・・60回以上 3ヶ月から1歳・・・50回以上 1~3歳・・・40回以上
3~6歳・・・35回以上 6~12歳・・・30回以上