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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
日本初-タマゴの早期摂取開始がタマゴアレルギー発症を予防
阪南中央病院小児科のトピックス 2016年12月8日のThe Lancetに早期からのタマゴ摂取(2段階で増量)の開始がタマゴアレルギーを予防する主旨の日本発の論文が掲載されました。タイトルは「Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema(PETIT); a randomized, double-blind, placebo-controlled trial」です。
この研究では、湿疹をもつ4−5ヶ月児をタマゴ摂取群とプラセボ群に分け、タマゴ摂取群の子どもには生後6−9ヶ月の間、加熱タマゴパウダーを1日50mg(25mgタマゴ蛋白、15分間固ゆで全卵の0.2g相当)、その後12ヶ月まで250mg(タマゴ蛋白125㎎、固ゆで全卵1.1gに相当)を毎日摂取してもらった。タマゴアレルギー発症の評価基準は12ヶ月時点での経口負荷試験で判定した。その結果、タマゴ摂取群ではタマゴアレルギーの発症率は5/60 : 8%で、12か月までタマゴを摂取しないプラセボ群では23/61 : 38%であった。
強い湿疹をもつ乳児に加熱タマゴを2段階で増量投与することは安全で、湿疹がありアレルギー発症のハイリスクの子どもでは、タマゴアレルギーの発症を8割予防したという結果が示された。
アレルギー疾患の第1の流行・増加の波は、喘息とアレルギー性鼻炎の流行であったが、2番目の波は、食物アレルギーの増加として高所得の国を襲っており、「この研究は、食物アレルギーによるアレルギー流行・増加の第2の波に打ち勝つ臨床的方策を策定する端緒となりうる。」とのまとめが行われ、タマゴでの研究でも、LEAPスタディーで示されたピーナッツ同様、原因となる食材を早期に摂取する戦略の有効性が示された。
ピーナッツとタマゴについて示されたことが、他のどの食品についても当てはまるとは限らず、この結果を他の食品に演繹して早期摂取を推奨することは時期尚早ではある。しかし、これまで、食物制限、抗原除去食という、消極的な対策を余儀なされてきたアレルギー対策に新しい有効な切り口が提供されたことの意義は大きい。食べることで耐性獲得を目指す経口免疫療法が、食物アレルギー治療の主流となりつつあるが、その乳児への適用が早期摂取の試みだとすれば、食物アレルギーの発症予防に果たす離乳食の役割の重要性とその見直しが今後重要なテーマとなってくる。早期の抗原摂取開始によるアレルギー発症予防の研究は離乳食とアレルギー発症予防を結びつけ、新たな展開を遂げつつある。
米国:ピーナッツアレルギーの予防、国レベルで改定ガイドラインが策定
改定ガイドライン
アメリカ国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は2017年1月、ピーナッツアレルギーの予防に関して、2010年に発表した食物アレルギーの診断と管理に関するガイドラインの改訂案を発表した。これは2015年に発表されたLEAP研究の結果およびその他の最近の研究結果に基づくものである。改訂ガイドラインは、ピーナッツアレルギーの発症の危険度を3グループに分類し、グループごとにガイドラインを示されている。
健康情報として周知
内容を周知するために、医師用、一般家庭および保育者用の2種類の要約リーフレットが出されている。以下に医師用の要約を掲載する。一般家庭および保育者用はより噛み砕いた表現になっている。(これも日本語に訳出しているので、依頼をいただいたら、添付ファイルで送信可能。)
全文の訳をご希望の方は、こちらから「全文訳希望」と、メールでご請求下さい。
阪南中央病院小児科訳をメールにて送らせていただきます。
ガイドラインの解説
改訂ガイドラインの詳細は、Addendum guidelines for the prevention of peanut allergy in the United States : Report of the National Institute of Allergy and Infectious Diseases—sponsored expert panelとして発表されている。
ガイドライン1:ピーナッツアレルギーのハイリスクグループ
ガイドライン1は、ピーナッツアレルギー発症のハイリスクグループで、重症の湿疹の子ども、またはタマゴアレルギーをもつ子ども、またはその両方をもつ子どもに対するガイドラインである。このグループでは、まずピーナッツ特異IgE抗体を測定、0.35KUA/L未満なら家庭でピーナッツ含有食品を開始、0.35以上ならプリックテストに進む。プリックテストで、対照とする生理食塩水のプリックテストよりどれぐらい膨疹が大きいかでA, B, Cのカテゴリーに分類される。
  • SPTカテゴリーA
    0~2mm大きい:テスト終了後、すぐに初回量として2gのピーナッツ蛋白が与えられる。
    2gのピーナッツ蛋白を含む食品のレシピ例:Bambaなら21個、ピーナッツバターならスプーン2杯(9~10g)、ピーナッツバターパウダーならスプーン2杯(4g)
    ピーナッツ蛋白は週に6~7g、3回以上に分けて、継続的に投与される。
  • SPTカテゴリーB
    3~7mm大きい:専門医の施設とその管理下で経口負荷テストを実施。陰性なら継続的なピーナッツ蛋白投与を始める。
  • SPTカテゴリーC
    8mm以上:ピーナッツアレルギーの可能性が高いので、ピーナッツ摂取は推奨されず、専門医による継続的な対応が行われるべき。
    ガイドライン1の子どもでは、血液検査と皮膚プリックテストの結果を確認した上で、既にピーナッツアレルギーを発症していると考えられる(SPカテゴリーBで、経口負荷試験陽性及びSPTカテゴリーCの)子どもを除いて、生後4〜6ヶ月までに年齢に見合ったピーナッツ含有食品を開始することが推奨された。
ガイドライン2:軽~中リスク
ガイドライン2は軽症〜中等症の湿疹をもつ子どものグループで、生後6ヶ月までに検査なしで、ピーナッツ含有食品を開始することが推奨された。
ガイドライン3:リスクなし
ガイドライン3は湿疹または食物アレルギーのない子どものグループで、家族の希望や文化的な習慣に従い、他の固形の食品と一緒に、自由にピーナッツ含有食品を始めるよう推奨された。
ピーナッツ消費に関する家庭や文化的な習慣は国や地域により大きく異なるため、わが国でのピーナッツの早期離乳食への導入が好ましいことかどうかについてはまだ検討が必要と考えられる。全国レベルでの米国の取り組みの今後の推移も慎重に追跡する必要がある。
参考:
「離乳食への早期介入による食物アレルギー予防」(あんしんねっとわーく126号)