阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
小児科にとって、ますます重大な疾患
全国調査による最近の動向からは、川崎病の増加傾向が示されています。1990年代までは、毎年約5000人でしたが、2006年には1万人以上の発症になっています。こども人口の減少の中での患者数の増加は、川崎病がこれまで以上に重大な疾患になってきていることを示しています。急性期の心障害の発生率は12.9%、初診1か月以降の心臓後遺症は3.8%、致命率は0.051%となっています。
小児科にとって、ますます重大な疾患
全国調査の傾向の動向の通り、2005年以後は1年間に20人前後の症例があります。
例 1 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
2003年 1 2 1 1 1 1 2 0 1 0 1 2 13
2004年 2 1 2 1 2 0 0 0 0 0 2 0 10
2005年 1 0 4 0 1 2 1 1 2 4 3 5 24
2006年 4 1 3 2 1 4 0 2 1 2 2 2 24
2007年 3 2 4 2 0 0 2 1 1 1 3 0 19
2008年 1 2 3 0 1 2 1 1 1 0 4 17
2009年 2 0 3 4                  
2008年には重症例が多発
2006年、2007年は軽症症例が多発
2006年と2007年の合計43症例中、γグロブリンを使用せず治癒したごく軽症例は21%(9例)、γグロブリン1回(1g/kg又は2g/kg)使用で鎮静化した症例は31例(67%)、γグロブリンを2回使用した難治例が2例(4,7%)でした。95%以上が、γグロブリン1回投与またはアスピリン経口投与のみで治癒し、発症1か月で、冠動脈の拡張又は動脈瘤を形成した症例は0でした。多発傾向にかかわらず、軽症化しているとの印象でした。
2008年 一転してγグロブリン不応、重症症例が増加
2008年は症例数は17症例でしたが、γグロブリン不応例が多い年でした。初回のγグロブリン不応で、2回以上γグロブリンを使用した症例:6例(35%)、複数回のγグロブリン投与にmPSLのパルス療法やウリナスタチンの併用中、冠動脈の拡大が進行し、以後の治療を、近畿大学小児科にお願いした症例が2例あり、冠動脈瘤の後遺症を残しました。
2009年
川崎病の重症化が進んでいるのではないかと心配しましたが、2009年は、これまでのところ、全例がγグロブリンの1回投与で鎮静化しており、一気に重症化が進んでいるわけではなさそうです。
γグロブリン不応例に対して積極的な追加治療
私たちがとりうる方法は、2003年に小児循環器病学会から発表された「川崎病急性期治療のガイドライン」をもとにしたものです。ガイドラインに示された、特効薬としてのγグロブリン(+アスピリン経口)療法に不応な症例に対しては、γグロブリンの再投与と早期にmPSLパルス療法を実施、ウリナスタチン併用など、積極的な対応を行うようにしています。最近、難治例を層別化し、重症と思われる症例に対して、ファーストラインとして、γグロブリンとステロイド剤を併用する治療法が試みられています。私たちも、これまで、投与後、48時間程度で行ってきた、γグロブリンの効果判定を、投与直後に変更し、不応例に対して早期に追加治療を行うことを検討しています。
2004年、レミケード=抗TNF-α療法が有効であったとの報告がだされました。ヒトIgG1のFc部分にマウスのFab部分を25%含むキメラ型抗TNF-α製剤で、関節リューマチやベーチェット病、クローン病などに使用されています。現場で使用するには、難治例に対して急性炎症と血管障害を頓挫させる効果の証明、副作用の検討など、いくつかのハードルがあり、直ぐには追加治療の方法とはなりがたい状況です。
退院後の生活加治療
発症後2~3か月は、アスピリン(3~)5mg/kg 分1の服用が勧められます。冠動脈に異常がなく、CRPも陰性化しておれば、保育所や幼稚園などの集団生活は可能です。
2~3か月経ち、アスピリン投与が終了する時期からは、水泳や鍛錬的なスポーツへの参加も可能です。インフルエンザ、DPT、Hibなどの不活化ワクチン、BCG、ポリオワクチンはγグロブリンによる影響はないと考えられており、この時期以後、接種可能です。
麻疹・風疹(MR)、水痘、ムンプスワクチンは、γグロブリン2g/kg投与後では、投与6か月以後に、1回目のγグロブリンに不応でγグロブリンを2回以上使用した場合は、最低9か月以後に接種することが推奨されています。
急性期以後の管理法 「川崎病管理基準」
日本川崎病研究会運営委員会編(2002 年改訂)の管理基準に準じて対応しています。
軽症例の基準を転載させていただきます。
1)
冠動脈病変のないもの(発症1ヵ月以内の急性期心エコー検査上冠動脈の拡大性病変が認められないもの、冠動脈の輝度上昇のみは有意としない、ただし、急性期症状が2週間以上遷延するものは急性期症状が終焉した2週間後位の心エコー検査所見を目安とする)
経過観察:発症1ヵ月、(6ヵ月)、1年、発症後5年をめどに経過観察、以後は主治医と保護者との協議によって個々に対応する
検査:心エコー検査を発症1ヵ月、1年、その後は必要があれば
運動制限:必要なし
治療:急性期症状消失後は必要なし

2)
一過性冠動脈拡大性病変:発症1ヵ月に正常化しているもの1)の基準に準じる
経過観察:1)に準じる
検査:1)に準じる
運動制限:必要なし
治療:急性期症状消失後は必要なし
川崎病研究の進歩
未だに原因不明とされる川崎病ですが、最新の方法を用いての原因追及が色々な角度から行われています。
感染症の関与、サイトカインと過剰免疫反応の関与、遺伝的素因の研究などで、いくつかの成果が発表されていますが、病因に迫るまでには至っていません。多発する症例を現場で治療する臨床小児科医の側から、何らかのきっかけを提供できないか、私たちの課題でもあると考えます。
参考 :
小児内科 2009年1月 特集 川崎病:最近の進歩と課題
川崎病研究会 川崎病の管理基準