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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
2011年10月アメリカ小児科学会は、SIDS(乳幼児突然死症候群)とSUID(予測不能乳児突然死)についての以下のようなkey wordを含む勧告を出しました。2005年の勧告を改訂したもので、今後数年間、SIDSとSUIDを減らすための新しいガイドラインとして、重要な役割を果たすことになります。これまで、日本でのSIDSから赤ちゃんを守るキャンペーンは主に、①うつぶせ寝は避ける②たばこはやめる③できるだけ母乳で育てる、の3項目を中心として行われてきましたが、今回の勧告は、より広範な対応を求めています。勧告の趣旨を読み取り、実践に役立てる取り組みが必要とされています。
全文の訳をご希望の方は、こちらから「全文訳希望」と、メールでご請求下さい。
阪南中央病院小児科訳をメールにて送らせていただきます。
Key word
  • Back to sleep
    上向き寝、仰臥位、背中全体を寝具表面につけた状態での睡眠
  • SIDS
    sudden infant death syndrome乳幼児突然死症候群
  • SUID
    sudden unexpected infant death予測不能乳児突然死
  • Suffocation
    窒息
  • Asphyxia
    酸欠
  • Strangulation
    絞扼
  • Entrapment
    身体的拘束、ベッドの隙間や緩い布の隙間などへのはまり込み、挟み込まれ
  • bed-sharing
    添い寝
  • room-sharing
    母児同室
  • pacifier
    おしゃぶり
  • AAP
    American Academy of Pediatricsアメリカ小児科学会
  • CDC
    Center for Diseases Control and Prevention アメリカ疾病予防管理センター
勧告の全文訳は別冊でお届けします。今回のトピックスとしては、勧告の概要と冒頭の部分の抄訳を掲載します。多いに議論され、参考にされるべき内容となっています。
AAP POLICY STATEMENT
「乳幼児突然死症候群および睡眠関連乳児死亡;
乳児の安全な睡眠環境に関する拡大勧告」
概要
1992年アメリカ小児科学会(AAP)が、乳児睡眠は「うつ伏せ以外の姿勢で」との勧告を行ってから、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率は大幅に減少した。しかしこの数年間、減少傾向はプラトーを示している。また、前回2005年にAAPがSIDSに関する勧告を出したあと、睡眠中の予測できない突然死(睡眠関連死亡)、すなわち、窒息・酸欠・entrapment(身体的拘束)、及び確定的でない、非特異的な原因による死亡が増加し、種々の原因による睡眠関連乳児死亡の重要性が大きくなってきている。危険因子には、対策によって危険を減らすことができるものとできないものがあるが、多くの危険因子は、SIDSと窒息で驚くほど一致している。
したがって、AAPはSIDSだけでなく、SIDSを含む睡眠関連乳児死亡の危険を減らすための安全な睡眠環境に焦点を当て、内容を拡大し勧告することとした。勧告は、以下のような内容にわたる。
仰臥位、固めの敷布団、母乳、母児同室・添い寝なし、予防接種、おしゃぶりの使用、子ども用ベッドにやわらかいもの(枕、ぬいぐるみなど)を置かない、暖めすぎない、タバコ・薬・アルコールを避けることなど。
その根拠についてはPediatrics誌本文を参照していただきたい。
はじめに
乳幼児突然死症候群(SIDS)は、現場の状況調査、解剖所見、臨床経過の振り返りを含め、あらゆる面から症例検討を行った上で、なお説明不可能な乳児の死亡に対してつけられる名称である。乳児の予測不能な突然死である予測不能乳児突然死(SUID sudden unexpected infant death)は、原因の説明がつくもの、SIDSのように説明がつかないものを含めて、乳児期の予測不能な突然死に対してつけられる名称である。SUIDの診断は、個々の症例検討を経た後、窒息、酸欠、entrapment、感染、誤嚥(ingestion)、代謝疾患、不整脈をもたらす心臓のチャンネル病、外傷(事故、非事故)などが原因である。SIDSや窒息死を起こす要因の多くは、予防可能かどうかを含めて、両者で驚くほど似かよっている。この文書は睡眠中におこるSUIDの分類に焦点を当てる。
表1は勧告の強さを度合い順にまとめたものである。SIDSとその他の睡眠関連死に関しては、無作為コントロール試験(RTC)でなく、症例コントロール研究(case control study)が基準であることに注意してほしい。
危険因子が特定された多くの疫学研究は、1歳までの乳児を対象としており、勧告は、それをもとに出されたものであるため、睡眠姿勢や睡眠環境に関する勧告は、実質的には1歳までの乳児に適用される。個人的な臨床上の問題を抱えている場合には、医師が相対的な危険と利益を測り、他の方法を推奨することは正当化される。
この報告や勧告の背景となる文献、総説、データ分析などについては、オンラインバージョンで同時に出された報告を参照してほしい。
“Technical Report—SIDS and Other Sleep-Related Infant Deaths:Expansion of Recommendation for a Safe Infant Sleeping Environment,”available in the online version
(Pediatrics Volume128,No5,november 2011)
表1.勧告のまとめと強さ
  • レベルA : 良質の信頼性のある科学的根拠に基づいている。将来の研究によっても結論が覆ることは起りがたい。
  • 睡眠は必ず、上向きで(back to sleep for every sleep)
  • 表面が堅め(firm)の敷き寝具を使用する。
  • 「母児同室、添い寝はだめ」を推奨する room-sharing without bed-sharing
  • ベッドから柔らかいもの、緩い寝具類を取り除く。
  • 妊婦は定期的な出産前ケアを受けなければならない。
  • 妊娠中、出生後ともタバコの曝露を回避する。
  • 妊娠中、出産後ともアルコールと禁止薬物の使用を避ける。
  • 母乳が推奨される。
  • うたた寝や睡眠時に、おしゃぶりを与えることを考慮。
  • 暖め過ぎを避ける。
  • SIDSの危険を減らす方法として、家庭での呼吸心拍モニタ装置の使用は行わない。
  • SIDSを減少させることに加えて、SIDS、窒息、他の事故死を含む全ての睡眠関連乳児死亡を減少させるために、安全睡眠環境の確保及びその方法に焦点を当てた国家的キャンペーンの展開。小児科医、家庭医、プライマリーケアの提供者は、積極的にこのキャンペーンに参画しなければならない。
  • レベルB : 部分的で十分に信頼できるとはいえない根拠に基づいての勧告で、今後の研究で結論が変化する可能性がある。
  • 乳児は、AAPとCDCの勧告に沿った予防接種を受けるべきである。
  • SIDSを減少させるとの宣伝で販売されている用具は使用しない。
  • 大人の見守りのもとで、乳児が覚醒状態にあるときに、うつぶせ姿勢の時間(tummy time)をとることは、発達を促し、姿勢による頭の扁平化を軽減するために推奨される。
  • レベルC : 一般的な合意と専門家の意見による勧告
  • 保健ケアの専門職、新生児哺育室およびNICU(新生児集中治療室)のスタッフ、保育士、子どものケアを担当する職種の人は、出生時からSIDSの危険低減勧告を熟知・実践しなければならない。
  • メディアと企業は、意見表明と宣伝に関して、安全睡眠ガイドラインに従って行うべきである。SIDSの危険を減らすための基本政策としては、家庭での呼吸心拍モニタ装置の使用は行わない。—呼吸心拍モニタ装置は、無呼吸、徐脈を発見するために、パルスオキシメータは酸素飽和度の低下を見つけるために、家庭で使用されることがある。しかし、これらの装置の使用がSIDSの発症率を低下させたとの証拠はない。一部のこれらの装置を必要とする乳児には価値があるが、ルーチンには使用すべきでない。また、退院前、病院でルーチンで呼吸心拍モニタリングを行うことが新生児のSIDSの危険を予知できたとの証拠もない。
  • SIDSと睡眠関連死の危険因子と原因、及びその病態生理学的機構の研究と調査は、最終的目標であるこれらの死を完全になくすまで、継続されなければならない。